テクノ和尚の脱ニート宣言

会社をクビになったボクが、どうやったら“最強”になれるのかひたすら考えるブログです。

『風立ちぬ』は究極のマザコン反戦映画だ!!!

風立ちぬ サウンドトラック

『風立ちぬ』2回観てきました。

 
1回目は、監督のザコンな感じが、良い意味でよく出た映画という印象でした。
しかし、主人公堀越二郎と実母が絡むシーンは2度しかありません。
 
・ひとつめはケンカから帰ってきて、ケガをした事の報告のシーン。
・昼寝している所を母に起こされるシーン。
 
この2シーンとも主人公と母の2人しか登場していません。妹が話に参加したりという事はないのです。ここで、主人公が母を独占したい思いが出ています。
 
さらに、普段は自分の思ったことを正直に話す二郎ですが、唯一ここだけケンカをした事を「転んだ」と嘘をついているのです。嘘は優しさの裏返しです。それほど、母に対して気を使っているのです。
 
このふたつの点で、二郎がどれほど母親思いなのかが伝わって来ます。
 
(この2シーンしか登場していないので、母は二郎だけの幻想ではないかと、最初思ったのですが、妹が上京して二郎のアパートに来た時、「母は今おじさんの家にいる」と言っているので、それは違いました。)
 
そして二郎の妻、菜穂子。彼女も母親を投影させているのではないかと思われます。宮崎監督自身も病気で寝たきりの母親がいました。飛行機の図面を横になる妻の手を握りながら書く姿は、監督自身も母親ともっとそばに居てあげたかった願望なのかも知れません。
 
菜穂子の手の描写が特に良かったです。
病気でやせ細った腕、薄くなった掌にもかかわらず、眠った二郎に優しく布団をかけてあげる芯の強そうな手は、まさしく母親の手だと感じました。
 
 
2回目は反戦映画だと思いました。
戦闘機がたくさん出てきたり、描いた時代が、市民が戦争のためにがんばっているような風潮があるので、戦争を賛美した映画なのかと思われがちですが、違うと思います。それは主人公たちからそう言っています。
 
二郎は会社の勉強会で「機関銃を積まなければ、もっと速くなるのに」と言い、二郎の同僚も「俺たちは武器商人じゃない。いい飛行機を作るだけだ」と言っており、彼らは飛行機が好きなだけなのです。戦争を賛美したり、二郎の事を笑っているのは、名前もないエキストラの連中だけなのです。
これは僕の憶測なのですが、そこを配慮するため、この映画ではエキストラのガヤのボリュームを全体的に下げている印象でした。震災の時の街の市民たちも妙に静かに動いています。
そのような配慮もしていながら、あれこれ言われるのは、本当に残念なことだなあ思います。
 
細かいところで印象に残ってるのはたくさんあります。
 
強い雨で葉っぱに穴が空く描写。
大粒の涙の流れ方。
毎回なぜか大股で歩く二郎。
 
ひとつひとつが、やさしく力強くてとてもよかったです。
 
飛行機が好き。母が好き。菜穂子が好き。自分が好き。飛行機を運ぶ牛が好き。好き。好き。好き。好き。。。
 
『好き』なものを集め、子どもの観客を良い意味で突き放し、監督のやりたかったことがつまった素晴らしい作品だと思いました。

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